こんにちは。ファイナンシャルプランナーのTABO(@tabosuuuu)です。
会社員の人は年末に「年末調整」をしていると思いますが、この年末調整って何が調整されているか答えられますか?
20代の人でしたら、
今はわからないけどそのうちわかるようになるのかなー
程度に思っていないでしょうか?私もそう思っていました。
しかし、30歳を過ぎても年末調整で何が調整されているのかわかる日は来ませんでした。
あなたの給与からは、
- 所得税
- 住民税
- 社会保険料
など、色々なものが控除されています(=引かれています)。
控除されているものが一体何であるかは自ら知ろうとしなければわかるようになる日は来ません。
そして、わかるようにならなければ、「いくら稼げば満足するのか」「いくら貯金すれば安心できるのか」ということもわからないため、「お金のために働かなくなり」「好きなことをして生きる」という日が来る可能性は低いのではないでしょうか。
今回の記事をご覧いただくことで、
- 年末調整は何を調整しているのか
- 年末調整が自分のお金とどう関係しているのか
ということがわかるようになります。
10年以上も年末調整のことが何もわからなかった私TABOですが、お金の勉強をし、ファイナンシャルプランナーになったことで、年末調整をよく理解することができるようになりました。
難しい言葉はあまり使わずできるだけわかりやすく説明しますのでぜひご覧ください。
年末調整とは
年末調整とは、年末に「所得税を調整すること」を言います。
会社員の人は、毎月の給与や賞与の額面金額から所得税などが「源泉徴収」されており、額面金額から源泉徴収額を引かれた額を「手取り」としてもらっています。
しかし、本来、所得税は1年間(1月〜12月)に得た年収に対して支払うものです。
ではなぜ年収がわかる年末より前に毎月の給与から所得税が引かれているのか?
それは、毎月引かれている所得税はあくまでも概算の値だからです。
つまり、「1年間に毎月源泉徴収された概算の所得税の合計額」と「1年間の収入(年収)から計算される本来の所得税の額」の間には差があるため、「その差を調整すること」を「年末調整」と言います。
さらに、所得税の計算をする過程で、
- 生命保険料控除
- 配偶者控除
- 扶養控除
といった「〜控除」というものにより年収に対して支払う所得税は概算額より減るため、「保険に入っているから年末調整で税金が戻ってくる」といった表現がされるのです。
所得税とは
年末調整が「所得税を調整している」とわかったところで、そもそも所得税とは何か?について説明します。
所得税とは、言葉の通り所得に対して発生する税金です。
ではその所得税はいくらなのか?を理解するためには、まず、
- 給与収入
- 給与所得
- 総所得
- 課税所得
という言葉の意味を知る必要があります。
なぜならば、あなたが会社からもらっているお金は「給与収入」であるのに対し、所得税は「課税所得」に税率を掛けた額が徴収されるからです。
所得税の計算方法
所得税の計算方法の概要をお伝えします。
あなたの給与収入(=額面の年収)から徴収される所得税の算出までの流れは以下の通りです。
- 給与収入 ー 給与所得控除 = 給与所得
- 給与所得 + その他の所得 = 総所得
- 総所得 ー 所得控除 = 課税所得
- 課税所得 × 所得税率 = 基準所得税
- 基準所得税 × 2.1% = 復興特別所得税
- 基準所得税 + 復興特別所得税 = 徴収される所得税
今回は、2020年の平均年収である436万円をスタートに、徴収される所得税を計算していきます。
給与収入とは
給与収入とは、「1年間の給与(基本給 + 残業代などの諸手当)」と「1年間の賞与」を合わせた合計額です。
いわゆる「年収」と呼ばれるものです。
給与収入 = 1年間の毎月の給与 + 賞与
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除 = 給与所得
- 給与所得 + その他の所得 = 総所得
- 総所得 ー 所得控除 = 課税所得
- 課税所得 × 所得税率 = 基準所得税
- 基準所得税 × 2.1% = 復興特別所得税
- 基準所得税 + 復興特別所得税 = 徴収される所得税
給与所得控除とは
「給与収入」から「給与所得控除」というものを引くと「給与所得」になります。
給与所得 = 給与収入 ー 給与所得控除
給与所得控除とは、給与収入からみなし経費として引かれるもののことです。
会社員の人は仕事をするために、
- スーツ
- パソコン
- 本
- 交際費
といったものを自腹で払っています。「仕事のために払っているものにまで税金をかけるのはかわいそう」という理由で税金の計算上、みなし経費として収入から控除してくれています。
収入から控除されると聞くと、
収入が減るの?
と思われるかもしれませんが、あくまでも所得税の計算上において引いているだけで、あなたがもらうお金から減っているわけではないので安心してください。
むしろ、給与所得控除により計算に用いるお金が減るため、所得税の額を減らしてくれています。
給与所得控除額は給与収入の額に応じて変わります。
年によっても変わりますが、令和4年(令和2年以降)の給与所得控除額は以下の通りです。
給与収入額 | 給与所得控除額 |
---|---|
162万5,000円まで | 55万円 |
162万5,000円超 〜 180万円まで | 給与収入額 × 40% - 10万円 |
180万円超 〜 360万円まで | 給与収入額 × 30% + 8万円 |
360万円超 〜 660万円まで | 給与収入額 × 20% + 44万円 |
660万円超 〜 850万円まで | 給与収入額 × 10% + 110万円 |
850万超 〜 | 195万円(上限) |
給与収入が436万円の人の給与所得控除額は、上記の計算式に当てはめると以下となります。
4,360,000 × 0.2 + 440,000 = 1,312,000
給与所得控除 = 131万2,000円
給与所得の計算
給与収入が436万円の会社員の人の給与所得控除額は131万2,000円です。
そのため、給与所得は以下となります。
4,360,000 - 1,312,000 = 3,048,000
給与所得 = 304万8,000円
ここでひとつ補足ですが、給与収入が660万円以下の場合は「所得税法別表第五」に従って給与所得を決めるというルールがあるため、計算式の結果とは若干異なる場合があります。
「所得税法別表第五」に従った給与所得額は、以下の国税庁のホームページから確認できます。
所得税法別表第五を見てもらうとわかりますが、年収が436万円以上436万4,000円未満の人の給与所得は一律、304万8,000円となります。
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除(131万2,000円) = 給与所得(304万8,000円)
- 給与所得(304万8,000円) + その他の所得 = 総所得
- 総所得 ー 所得控除 = 課税所得
- 課税所得 × 所得税率 = 基準所得税
- 基準所得税 × 2.1% = 復興特別所得税
- 基準所得税 + 復興特別所得税 = 徴収される所得税
総所得とは
所得には、給与所得を含めた10種類もの「〜所得」というものがあり、その合計を総所得と言います。
以下の10種類です。
- 給与所得
- 退職所得
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
会社からの給与以外に所得がない人は、給与所得 = 総所得 と考えて大丈夫です。
給与収入が436万円の人の総所得は以下となります。
総所得 = 304万8,000円
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除(131万2,000円) = 給与所得(304万8,000円)
- 給与所得(304万8,000円) + その他の所得(0円) = 総所得(304万8,000円)
- 総所得(304万8,000円) ー 所得控除 = 課税所得
- 課税所得 × 所得税率 = 基準所得税
- 基準所得税 × 2.1% = 復興特別所得税
- 基準所得税 + 復興特別所得税 = 徴収される所得税
所得控除とは
「所得税とは」の章で、所得税は「課税所得」に対して税率を掛けると説明しました。
その課税所得は「総所得」から「所得控除」というものを引くことで算出されます。
課税所得 = 総所得 ー 所得控除
所得控除にはたくさんの種類があり、例えば以下があります。
- 基礎控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 配偶者控除
- 扶養控除
- 寄附金控除
種類が多いため所得控除の全てをここでは紹介しませんが、ほとんどの会社員に関係するのは、
- 基礎控除
- 社会保険料控除
の2つです。
基礎控除とは
基礎控除は、総所得が2,500万円以下の人全てに適用される控除です。
総所得に応じて以下の通りとなっています。
総所得額 | 基礎控除額 |
---|---|
2,400万円まで | 48万円 |
2,400万円超 〜 2,450万円まで | 32万円 |
2,450万円超 〜 2,500万円まで | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
総所得が2,400万円を超える人はなかなかいないと思うので、基礎控除額は48万円と思っていただいて大丈夫です。
基礎控除 = 48万円
社会保険料控除とは
社会保険料とは、会社員の人でしたら所得税や住民税とともに給与から毎月控除されているお金で、以下の総称です。
- 厚生年金保険料
- 健康保険料
- 雇用保険料
- 介護保険料(40歳以上の場合)
1年間に支払ったこれらの合計額を、社会保険料控除として総所得から引きます。
課税所得の計算
給与収入が436万円の会社員の人の総所得は304万8,000円です。
ここで、
- 基礎控除:48万円
- 社会保険料:62万2,300円※社会保険料の値は仮の値
とした場合、課税所得は以下となります。
3,048,000 – 480,000 – 622,300 = 1,945,700
さらに、課税所得は千円未満を切り捨てます。
課税所得 = 194万5,000円
「扶養控除」や「生命保険料控除」がある人は、さらに総所得から控除額を引くことで課税所得を求めてください。
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除(131万2,000円) = 給与所得(304万8,000円)
- 給与所得(304万8,000円) + その他の所得(0円) = 総所得(304万8,000円)
- 総所得(304万8,000円) ー 所得控除(110万2,300円) = 課税所得(194万5,000円)
- 課税所得(194万5,000円) × 所得税率 = 基準所得税
- 基準所得税 × 2.1% = 復興特別所得税
- 基準所得税 + 復興特別所得税 = 徴収される所得税
所得税の計算
課税所得まで理解できたら所得税の算出まであと少しです。
所得税の計算式は以下の通りです。
課税所得額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円 〜 329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円 〜 694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円 〜 899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円 〜 1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円 〜 3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円 〜 | 45% | 479万6,000円 |
ここでひとつ注意していただきたいのは、上記の表を見ると、課税所得が上がるほど、税率が高くなると思われるかもしれません。
収入が増えるほど所得税は増えるんだろー
と言っている人をよく見ます。
間違っているわけではありませんが少し勘違いをしています。
所得税は、「超過累進課税」という方式が用いられており、課税所得が一定額を超えた額に対して高い税率がかかるというものです。
例えば、課税所得が700万円の場合に、700万円全体に対して23%の所得税がかかるのではなく、695万円を超えた5万円に対して23%の所得税がかかります。
その計算のために、表の「控除額列」の値(=63万6,000円)が引かれます。
課税所得が700万円の場合、所得税は以下となります。
7,000,000 × 0.23 - 636,000 = 974,000
この97万4,000円という金額は、
- 195万円まで5%の所得税:1,950,000 × 0.05 = 97,500
- 195万円から330万円まで(=135万円)10%の所得税:1,350,000 × 0.1 = 135,000
- 330万円から695万円まで(=365万円)20%の所得税:3,650,000 × 0.2 = 730,000
- 695万円から700円まで(=5万円)23%の所得税:50,000 × 0.23 = 11,500
の合計額、97,500 + 135,000 + 730,000 + 11,500 = 974,000 と一致することがわかります。
課税所得が上がると所得税が上がること自体は間違いではないですが、課税所得全体に対して高い税率が掛かるわけではない点を覚えておいてください。
つまり、
年収が695万円を超えると税金が高くなるから695万円未満に抑えるぞー
と思う必要はあまりないということです。
給与収入が436万円の人は、総所得が194万5,000円であるため、所得税は以下となります。
1,945,000 × 0.05 = 97,250
ただし、この所得税は「基準所得税」と呼ばれるもので、実際に徴収される所得税は「基準所得税」に「復興特別所得税」を加えた額になります。
基準所得税 = 9万7,250円
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除(131万2,000円) = 給与所得(304万8,000円)
- 給与所得(304万8,000円) + その他の所得(0円) = 総所得(304万8,000円)
- 総所得(304万8,000円) ー 所得控除(110万2,300円) = 課税所得(194万5,000円)
- 課税所得(194万5,000円) × 所得税率(5%) = 基準所得税(9万7,250円)
- 基準所得税(9万7,250円) × 2.1% = 復興特別所得税
- 基準所得税(9万7,250円) + 復興特別所得税 = 徴収される所得税
復興特別所得税とは
復興特別所得税は、2011年の東日本大震災の復興を目的に基準所得税に対し2.1%が課される税金です。
実施期間は2013年〜2037年であり、納税者全員が支払う義務があります。
給与収入が436万円の人は、基準所得税が9万7,250円であるため、復興特別所得税は以下となります。
97,250 × 0.021 = 2,042.25
さらに、復興特別所得税は1円未満を切り捨てます。
復興特別所得税 = 2,042円
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除(131万2,000円) = 給与所得(304万8,000円)
- 給与所得(304万8,000円) + その他の所得(0円) = 総所得(304万8,000円)
- 総所得(304万8,000円) ー 所得控除(110万2,300円) = 課税所得(194万5,000円)
- 課税所得(194万5,000円) × 所得税率(5%) = 基準所得税(9万7,250円)
- 基準所得税(9万7,250円) × 2.1% = 復興特別所得税(2,042円)
- 基準所得税(9万7,250円) + 復興特別所得税(2,042円) = 徴収される所得税
徴収される所得税
徴収される所得税の計算式は以下の通りです。
徴収される所得税 = 基準所得税 + 復興特別所得税
そのため、年収が436万円の人が徴収される所得税は以下となります。
97,250 + 2,042 = 99,292
さらに、徴収される所得税は百円未満を切り捨てます。
徴収される所得税 = 9万9,200円
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除(131万2,000円) = 給与所得(304万8,000円)
- 給与所得(304万8,000円) + その他の所得(0円) = 総所得(304万8,000円)
- 総所得(304万8,000円) ー 所得控除(110万2,300円) = 課税所得(194万5,000円)
- 課税所得(194万5,000円) × 所得税率(5%) = 基準所得税(9万7,250円)
- 基準所得税(9万7,250円) × 2.1% = 復興特別所得税(2,042円)
- 基準所得税(9万7,250円) + 復興特別所得税(2,042円) = 徴収される所得税(9万9,200円)
この9万9,200円が、給与収入436万円の人が支払う本来の所得税になり、「毎月源泉徴収されていた所得税の合計額」と「9万9,200円」の「差」が、年末調整で戻ってきたり、追加で支払ったりするということです。
おわりに
今回は、年末調整と所得税の関係を説明しました。
所得税の計算方法を知らなくても生きていくことはできます。
しかし、お金のために働かない自由な人生を生きたければ、自身の年収に対しいくらの税金がかかるかということを知る必要があります。
「保険に入ると節税になる」と言われたりしますが、生命保険料控除は、「徴収される所得税」から引かれるわけではなく、あくまで「総所得」から引かれるだけなので、節税の効果はそれほど大きくありません。
さらに、保険料全額が生命保険料控除になるわけでもありません。
こういうことを知っておくだけで、節税効果を謳う人に言い包められて不要な保険に入る可能性も減らせるでしょう。
また、住民税や社会保険料については以下で紹介しています。
ぜひ、所得税と合わせてご覧いただければと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。ではまた。