こんにちは。ファイナンシャルプランナーのTABO(@tabosuuuu)です。
会社員の人は6月頃に会社から「住民税決定通知書」が配布されたと思います。
あなたは住民税決定通知書の見方って知っていますか?
私は社会人になってから10回以上この通知書をもらっていますが、
去年の年収って○円なんだー
くらいしか見ていなく、
住民税とかよくわからないけどそのうちわかるようになるのかなー
程度に思っていました。
しかし、知ろうとしなければ30歳を過ぎても住民税のことがわかる日は来ませんでした。
ところで、なぜ住民税の計算方法を知る必要があると思いますか?
別に計算方法を知らなくても生きていくことはできます。
知るべき理由は、自分の給与から「何が」「いくら」引かれているかを知ることが、お金のために働かなくなり「好きなことをして生きる人生に繋がるから」です。
「税金」や「社会保険料」など、みなさんの給与からは多くのお金が引かれています。
引かれる額は額面金額の約20%です。
生涯年収を2億5,000万円だとすると5,000万円も引かれるということです。
この5,000万円を何も知らずに搾取されていては経済的に自由になることは難しいのではないでしょうか。
たくさん引かれているお金達の正体を知り「どうすれば引かれるお金を減らせるか」を考えてみませんか。
住民税の計算方法
まず初めに住民税の計算方法の概要をお伝えします。
会社から配布された住民税決定通知書と合わせて見てみてください。
あなたの給与収入(額面の年収)から徴収される住民税の算出までの流れは以下の通りです。
- 給与収入 ー 給与所得控除 = 給与所得
- 給与所得 + その他の所得 = 総所得
- 総所得 ー 所得控除 = 課税所得
- 課税所得 × 10% = 税額控除前所得割
- 税額控除前所得割 ー 税額控除 = 所得割
- 所得割 + 均等割 = 徴収される住民税
今回は、2020年の平均年収である436万円をスタートに、徴収される住民税を計算していきます。
住民税とは
住民税とは、所得税と同じく所得に応じて支払わなければいけない税金で、所得税は国に支払う「国税」であるのに対し、住民税は都道府県と市町村に支払う「地方税」です。
住民税の計算方法を知るためには、まず、
- 給与収入
- 給与所得
- 総所得
- 課税所得
という言葉の意味を知る必要があります。
なぜならば、あなたが会社からもらっているお金は「給与収入」であるのに対し、住民税は「課税所得」に税率10%を掛けた額が徴収されるからです。
給与収入とは
給与収入とは、
- 1年間の給与(基本給 + 残業代などの諸手当)
- 1年間の賞与
を合わせた合計額です。
いわゆる「年収」と呼ばれるものです。
給与収入 = 1年間の毎月の給与 + 賞与
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除 = 給与所得
- 給与所得 + その他の所得 = 総所得
- 総所得 ー 所得控除 = 課税所得
- 課税所得 × 10% = 税額控除前所得割
- 税額控除前所得割 ー 税額控除 = 所得割
- 所得割 + 均等割 = 徴収される住民税
給与所得とは
「給与収入」と「給与所得」が紛らわしく、考えることがめんどくさくなると思いますが、できるだけわかりやすく説明しますので付いてきてください。
上記で説明した「給与収入(=年収)」から、みなし経費として「給与所得控除」というものが控除されます。
みなし経費とは、「スーツとかパソコンとか、働くために自腹でお金払っているだろうから税金の計算から引いてあげるよ」という理由で引かれるものです。
「給与収入(=年収)」から「給与所得控除」を引いた額が「給与所得」です。
給与所得 = 給与収入 ー 給与所得控除
収入から控除されると聞くと、
収入が減るのかー
と思われるかもしれませんが、あくまでも住民税の計算上において引いているだけで、みなさんがもらうお金から減っているわけではないので安心してください。
むしろ、給与所得控除により計算に用いるお金が減るため、住民税の額を減らしてくれています。
給与所得控除とは
上述した通り、給与所得控除とは給与収入からみなし経費として引かれる額のことです。
給与所得控除額は給与収入の額に応じて変わります。
年によっても変わりますが、令和2年以降の給与所得控除額は以下の通りです。
給与収入額 | 給与所得控除額 |
---|---|
162万5,000円まで | 55万円 |
162万5,000円超 〜 180万円まで | 給与収入額 × 40% - 10万円 |
180万円超 〜 360万円まで | 給与収入額 × 30% + 8万円 |
360万円超 〜 660万円まで | 給与収入額 × 20% + 44万円 |
660万円超 〜 850万円まで | 給与収入額 × 10% + 110万円 |
850万超 〜 | 195万円(上限) |
例えば、給与収入が436万円の方の給与所得控除額は、上記の計算式に当てはめると以下となります。
4,360,000 × 0.2 + 440,000 = 1,312,000
給与所得控除 = 131万2,000円
そのため、給与所得は以下となります。
4,360,000 - 1,312,000 = 3,048,000
給与所得 = 304万8,000円
ここでひとつ補足ですが、給与収入が660万円以下の場合は「所得税法別表第五」に従って給与所得を決めるというルールがあるため、計算式の結果とは若干異なる場合があります。
「所得税法別表第五」に従った給与所得額は、以下の国税庁のホームページから確認できます。
所得税法別表第五を見てもらうとわかりますが、年収が436万円以上436万4,000円未満の人の給与所得は一律、304万8,000円となります。
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除(131万2,000円) = 給与所得(304万8,000円)
- 給与所得(304万8,000円) + その他の所得 = 総所得
- 総所得 ー 所得控除 = 課税所得
- 課税所得 × 10% = 税額控除前所得割
- 税額控除前所得割 ー 税額控除 = 所得割
- 所得割 + 均等割 = 徴収される住民税
総所得とは
所得には、給与所得を含めた10種類もの「〜所得」というものがあり、その合計を総所得と言います。
以下の10種類です。
- 給与所得
- 退職所得
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
会社からの給与以外に所得がない人は「給与所得」 = 「総所得」 と考えて大丈夫です。
給与収入が436万円の方の総所得は以下となります。
総所得 = 304万8,000円
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除(131万2,000円) = 給与所得(304万8,000円)
- 給与所得(304万8,000円) + その他の所得(0円) = 総所得(304万8,000円)
- 総所得(304万8,000円) ー 所得控除 = 課税所得
- 課税所得 × 10% = 税額控除前所得割
- 税額控除前所得割 ー 税額控除 = 所得割
- 所得割 + 均等割 = 徴収される住民税
課税所得とは
住民税は「課税所得」に対して税率10%を掛けて算出されます。
その課税所得は総所得から所得控除額を引くことで算出されます。
課税所得 = 総所得 ー 所得控除
この式自体は所得税の場合と同様ですが、所得控除の額が所得税の場合と異なります。
所得控除とは
所得控除とは、総所得から住民税の計算の元になる課税所得を減らしてくれる要素のことで、例えば以下があります。
- 基礎控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 配偶者控除
- 扶養控除
- 寄附金控除
種類が多いため全てをここでは説明しませんが、全ての会社員に関係するのは、
- 基礎控除
- 社会保険料控除
の2つです。
「基礎控除」の値が所得税と異なります。
基礎控除とは
基礎控除とは、総所得が2,500万円以下の人全てに適用される控除です。
総所得に応じて以下の通りとなっています。
総所得額 | 基礎控除額 |
---|---|
2,400万円まで | 43万円 |
2,400万円超 〜 2,450万円まで | 29万円 |
2,450万円超 〜 2,500万円まで | 15万円 |
2,500万円超 | 0円 |
総所得が2,400万円を超える人はなかなかいないと思うので、基礎控除額は43万円と思っていただいて大丈夫です。
基礎控除 = 43万円
所得税の場合の基礎控除額は48万円なので、どちらの税金かに言及せずに基礎控除の話をしてしまうと、
基礎控除は48万円?43万円?どっちなんだー
と混乱する原因になるので注意しましょう。
社会保険料控除とは
社会保険料とは、所得税や住民税とともに給与から毎月控除されているお金で、以下の総称です。
- 厚生年金保険料
- 健康保険料
- 雇用保険料
- 介護保険料(40歳以上の場合)
1年間に支払ったこれらの合計額を、社会保険料控除として総所得から引くことになります。
課税所得の計算
給与収入が436万円の会社員の人の総所得は304万8,000円です。
ここで、
- 基礎控除:43万円
- 社会保険料:62万2,300円※社会保険料の値は仮の値
とした場合、課税所得は以下となります。
3,048,000 – 430,000 – 622,300 = 1,995,700
さらに、課税所得は千円未満を切り捨てます。
課税所得 = 199万5,000円
扶養控除や生命保険料控除がある人は、総所得から控除額を引くことで課税所得を求めてください。
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除(131万2,000円) = 給与所得(304万8,000円)
- 給与所得(304万8,000円) + その他の所得(0円) = 総所得(304万8,000円)
- 総所得(304万8,000円) ー 所得控除(105万2,300円) = 課税所得(199万5,000円)
- 課税所得(199万5,000円) × 10% = 税額控除前所得割
- 税額控除前所得割 ー 税額控除 = 所得割
- 所得割 + 均等割 = 徴収される住民税
住民税の計算
住民税は、「課税所得」の額に応じて課税される「所得割」と、全員が一定額課税される「均等割」から構成されています。
住民税 = 所得割 + 均等割
所得割とは
「所得割」とは、「課税所得」の額に応じて課税される税金で、税額控除前所得割から税額控除額を引くことで求められます。
所得割 = 税額控除前所得割 ー 税額控除
税額控除前所得割とは
税額控除前所得割とは、「課税所得」に税率10%を掛けることで算出されます。
所得税の税率は、所得に応じた「超過累進課税」の方式が採用されており、高い所得部分に対し高い税率が設定されていますが、住民税の税率は所得によらず一律課税所得の10%となっています。
ただし、税率は一律でも住民税は「課税所得」にかかる税金であり、給与収入が多いほど「給与所得控除」や「所得控除」の割合が減るため、給与収入が多いほど収入に占める住民税の割合は多くなります。
税額控除前所得割 = 課税所得 × 10%
なお、住民税の税率は10%ですが、その内訳は、
- 市町村民(区民)税:6%
- 道府県民(都民)税:4%
となっています。
都市によっては、市町村民税:8%、道府県民税:2%だったりしますが、どちらにせよ合計は10%です。
課税所得が199万5,000円の人の税額控除前所得割は以下となります。
1,995,000 × 0.1 = 199,500
税額控除前所得割 = 19万9,500円
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除(131万2,000円) = 給与所得(304万8,000円)
- 給与所得(304万8,000円) + その他の所得(0円) = 総所得(304万8,000円)
- 総所得(304万8,000円) ー 所得控除(105万2,300円) = 課税所得(199万5,000円)
- 課税所得(199万5,000円) × 10% = 税額控除前所得割(19万9,500円)
- 税額控除前所得割(19万9,500円) ー 税額控除 = 所得割
- 所得割 + 均等割 = 徴収される住民税
税額控除とは
税額控除とは、所得割を計算するために税額控除前所得割から引いてくれる額のことで、例えば以下があります。
- 調整控除
- 寄附金税額控除
- 配当控除
- 住宅ローン控除
全員に関係するのは「調整控除」で、ほとんどの人は2,500円(市町村民(区民)税1,500円 + 道府県民(都民)税1,000円)控除されます。
また、ふるさと納税をされる人も多くいると思いますが、ふるさと納税をワンストップ特例制度で行った人は、寄附金税額控除として寄附金から2,000円の自己負担金を引いた額が控除されます。
ふるさと納税で確定申告を行なった場合は、所得税から引かれる部分があったりと計算が複雑になりますが、最終的に寄附金から2,000円を引いた額が控除されるという点で違いはありません。
税額控除前所得割が19万9,500円で調整控除以外に税額控除がない人の所得割は以下となります。
199,500 - 2,500 = 197,000
所得割 = 19万7,000円
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除(131万2,000円) = 給与所得(304万8,000円)
- 給与所得(304万8,000円) + その他の所得(0円) = 総所得(304万8,000円)
- 総所得(304万8,000円) ー 所得控除(105万2,300円) = 課税所得(199万5,000円)
- 課税所得(199万5,000円) × 10% = 税額控除前所得割(19万9,500円)
- 税額控除前所得割(19万9,500円) ー 税額控除(2,500円) = 所得割(19万7,000円)
- 所得割(19万7,000円) + 均等割 = 徴収される住民税
均等割とは
所得割が課税所得に応じて課税される税金に対し、均等割は全員が一定額を支払う税金となります。
市町村によって多少変わることもありますが、基本は、
- 市町村民(区民)税:3,500円
- 道府県民(都民)税:1,500円
の合計5,000円が課税されます。
均等割 = 5,000円
徴収される住民税
これまでの計算により、所得割が19万7,000円の人の住民税は以下となります。
197,000 + 5,000 = 202,000
つまり、給与収入が436万(任意の控除がなく社会保険料を62万2,300円とした場合)の人の徴収される住民税は以下となります。
徴収される住民税 = 20万2,000円
- 給与収入(436万円) ー 給与所得控除(131万2,000円) = 給与所得(304万8,000円)
- 給与所得(304万8,000円) + その他の所得(0円) = 総所得(304万8,000円)
- 総所得(304万8,000円) ー 所得控除(105万2,300円) = 課税所得(199万5,000円)
- 課税所得(199万5,000円) × 10% = 税額控除前所得割(19万9,500円)
- 税額控除前所得割(19万9,500円) ー 税額控除(2,500円) = 所得割(19万7,000円)
- 所得割(19万7,000円) + 均等割(5,000円) = 徴収される住民税(20万2,000円)
ここで算出された20万2,000円を12分割した額が、翌年の6月から翌々年の5月までに毎月の給与から源泉徴収されるということです。(100円未満の端数は6月に寄せられるため6月は1万7,200円、7月以降は1万6,800円になります)
これが住民税の計算方法となります。
おわりに
今回は住民税の計算方法について説明しました。
自身の住民税を計算できたでしょうか?
計算方法を知ったところでいきなり生活が豊かになるわけでありません。
しかし、「〜控除」という名前でも「生命保険料控除」は総所得から控除されるのに対し、「寄附金控除」や「住宅ローン控除」は税額控除前所得割から控除されるという点で、後者の方が最終的な住民税から控除される割合が多いことがわかります。
「何をすれば税金が減らせるのか」を知ることで、民間保険の選び方がわかったり、ふるさと納税の重要性に気付くことができます。
賢い節税方法を知ることでお金のために働かない自由な人生に近づいていきましょう。
また、所得税や社会保険料については以下で紹介しています。
【所得税について】
【社会保険料について】
ぜひ、住民税と合わせてご覧いただければと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。ではまた。