こんにちは。ファイナンシャルプランナーのTABO(@tabosuuuu)です。
突然ですが、「控除」とは何かご存じでしょうか?
給与から引かれるやつだろー
程度に思っている人が多いのではないでしょうか。
私もそうでした。
「控除とは額面の給与から引かれるもの」
つまり、引かれた分だけ自分のお金が減るという認識でした。
社会人の人は
- 給与所得控除
- 扶養控除
- 生命保険料控除
- 所得控除
- 住宅ローン控除
- 税額控除
といった「控除」が付く言葉を目にする機会が度々あると思います。
さらに、「控除があると節税になるよ」といった声も聞こえてきます。
そうした時に
控除されると自分のお金が減るんじゃないのかー
と混乱してしまっている人はいないでしょうか?
私自身、社会人歴10年を過ぎても、「控除=もらえるお金が減る」と思っていて、「控除で節税になる」と聞くたびに、
どういうこと?そもそも控除ってなんなんだー
と混乱していました。
今回の記事をご覧いただくことで、同じような疑問を持っていた人はスッキリしていただけると思います。
控除とは
Wikipediaで「控除」を調べてみると、以下の記載があります。
「控除(こうじょ)とは、ある金額から一定の金額を差し引くことを指す」
つまり、控除とは「差し引く」という意味しか持っておらず、
- 「何」を目的に
- 「何」から「何」を差し引くか
で、その意味は全く変わってくるということです。
控除には大きく以下の3種類があります。
- 給与天引き:受け取る手取り額を計算するために、「毎月の給与」から差し引くもの
- 給与所得控除と所得控除:支払う税金を減らすために、「年収」や「所得」から(計算上)差し引くもの
- 税額控除:決まった税金を減らすために、「所得税」や「住民税」から差し引くもの
この3種類について説明していきます。
給与天引きとは
まず、「給与天引き」についてご説明します。
多くの人が控除と聞いて思い浮かべるのは給与天引きだと思います。
この控除は
- 目的:受け取る手取り額を計算するために
- 何から:毎月の給与から
- 何を:税金(所得税や住民税)や社会保険料(厚生年金保険料や健康保険料など)を
差し引きます。
多くの人が思っている控除はこれだと思うので、細かい説明は不要かと思いますが、毎月の額面の給与から、税金や社会保険料が引かれるため、引かれた分だけ受け取る手取りが減るということです。
給与所得控除と所得控除とは
次に、「給与所得控除」と「所得控除」についてご説明します。
この控除は
- 目的:支払う税金を減らすために
- 何から:年収や所得から
- 何を:給与所得控除額や所得控除額を
『計算上』差し引きます。
ここで言う税金とは、所得税と住民税のことです。
- 所得税については、年末調整と所得税の関係を知ろうの記事
- 住民税については、住民税の計算方法を知ろうの記事
で詳しく説明していますので、こちらもご覧いただければと思います。
ここで、税金の計算方法を確認してみます。
- 給与収入 ー 給与所得控除 = 給与所得
- 給与所得 ー 所得控除 = 課税所得
- 課税所得 × 税率 = 計算上の税金(所得税や住民税)
- 計算上の税金 ー 税額控除 = 実際に支払う税金
給与収入というのが、いわゆる年収です。
年収にそのまま税率を掛けると、とんでもない額になってしまいます。
住民税の税率は一律10%のため、年収が400万円の場合、住民税が40万円になるということです。
そのため、個人の様々な事情を考慮して、年収から、『計算上』色々な額を差し引いてあげて、給与収入よりはるかに小さくなった「課税所得」に対して税率を掛けることで税金が減るというものです。
税金を減らすために『計算上』引いているというところがポイントで、ここで引かれた額によってみなさんが受け取るお金が減るわけではないということです。
給与所得控除とは
給与所得控除とは、「みなし経費」とも呼ばれるものです。
会社員の人は、受け取った手取りから
- スーツ
- パソコン
- 筆記用具
- 本
など、仕事に関係するものを自腹で買うことがあると思いますが、「仕事で必要なものにまで税金を掛けるのはおかしいよね」という理由で、年収から「みなし経費」として差し引いてくれます。
給与所得控除の額は、年収によって変わってきますが、年収が850万円まででしたら、20〜35%程度になります。
年収が400万円の場合は、124万円が給与所得控除となり、所得控除額を引く元になる「給与所得」は、276万円となります。
所得控除とは
所得控除とは、年収から給与所得控除された「給与所得」に対して、さらに個人の様々な事情を考慮して、税金の計算に用いる「課税所得」を減らしてくれるものです。
2022年現在、所得控除は以下の15種類の総称です。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄附金控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
ほとんどの社会人に共通するのは、
- 社会保険料控除
- 基礎控除
で、年収が400万円の場合は、約110万円が控除されるため、税金計算の元になる「課税所得」は276万円から110万円を引いた、166万円となります。
15種類の所得控除の内、よく耳にするであろう控除は、
- 生命保険料控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
あたりが該当すると思いますが、これらの対象であれば、166万円からさらにその控除額分だけ課税所得が減ります。
繰り返しになりますが、給与所得控除や所得控除は、支払う税金を減らすために、計算上差し引いているものです。
住民税の税率は一律10%ですが、もしも給与所得控除や所得控除というものがなければ、年収400万円の場合、40万円の住民税がかかってしまいますが、控除により課税所得が166万円になっているので、住民税は16万6,000円まで減るということです。
給与天引きの控除は、手取りが減ってしまうので嬉しくない控除でしたが、
給与所得控除や所得控除は、支払う税金を大きく減らしてくれるので、嬉しい控除であることをおわかりいただけると思います。
なお、最近よく耳にする「iDeCo」(個人型確定拠出年金)の掛金は、所得控除の1つである「小規模企業共済等掛金控除」に該当するので、「iDeCoは節税になる」という表現がされます。
税額控除とは
最後に、税額控除についてご説明します。
この控除は、
- 目的:決まった税金を減らすために
- 何から:所得税や住民税から
- 何を:住宅ローン控除額やふるさと納税額※を
差し引きます。
※ふるさと納税は、正しくは所得控除でもありますが、実態としては、納税額から2,000円を差し引いた額が住民税から差し引かれるので、ここでは税額控除として説明します。
所得控除は、控除により課税所得を減らしそこに税率を掛けていたのに対し、税額控除は課税所得に税率を掛けて決まった税金から直接差し引きます。
住民税において、所得控除が10万円の場合は、10%の税率を掛けた1万円税金が減るだけですが、税額控除が10万円の場合は、そのまま10万円税金が減ります。
所得控除も税額控除もどちらも税金を減らしてくれるものですが、節税効果は税額控除の方が圧倒的に大きいということです。
節税として「住宅ローン控除」や「ふるさと納税」の名前が真っ先に上がるのには、これらが「税額控除だから」というのが最大の理由です。
おわりに
今回は「控除とは」をテーマに、
- 給与天引き
- 給与所得控除と所得控除
- 税額控除
の3種類についてご説明しました。
まとめると以下の通りです。
- 給与天引き:「受け取る手取り額を計算するため」に、「毎月の給与」から「税金や社会保険料」を差し引く→嬉しくない
- 給与所得控除と所得控除:「支払う税金を減らすため」に、「年収や所得」から「みなし経費や扶養控除など」を計算上差し引く→嬉しい
- 税額控除:「決まった税金を減らすため」に、「所得税や住民税」から「住宅ローン控除額やふるさと納税額」を差し引く→すごく嬉しい!
控除についておわかりいただけたでしょうか?
お金のために働かない自由な人生を生きるためには税金のコントロールが必須になります。
- ふるさと納税→税額控除だから絶対やるべき!
- iDeCo→所得控除だけど、掛金全てが控除の対象だからできるだけやるべき!
- 生命保険→所得控除だし、掛金全てが控除の対象になるわけではないから、節税のために入るものではない!
こういったことが判断できるようになることが自由な人生への第一歩です。
これからもお金の知識を身に付け行動していきましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。ではまた。